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扉シリーズ 第2.8章 ロビンフッド12

「ふぅ~

ヤニを買っておいて

正解やな~」

俺は陽子さんの住む

サンハイツ鶴澤の2階と

3階の間の踊り場で出会った

目測で2メートル50センチ

はあるであろう全裸のデカすぎる

おっさんの口の中に吸い込まれた

と思ったらしばらく重力すら

感じない暗闇の中を彷徨い

陽子さんの部屋と同じ作りの

同じ間取りの部屋に居た。

しかしその部屋には家具の類は

一切無く人が生活しているような

気配も匂いも無かった。

403号室に1人残している陽子さん

に自動販売機にジュースとタバコを

買いに行った時に外から感じた影が

気になる俺は死んでいないのなら

急いで4階に戻りたいのだがまず玄関の

ドアは何をしても開かずにならば

ベランダはとガラスのドアを開けてみるが

開かない。

しかし外の景色は見えるし間違いなく

この景色は陽子さんの住むサンハイツ鶴澤の

ベランダから見えている景色であるという事は

地元民である俺には解る。

何より今俺が吸っている愛煙して

やまないコールドを購入した自動販売機の

明かりがこの窓ガラス越しに下に見える

のである。

しかしこの時点でこの空間自体が

あのデカイ裸族のおっさんが

言うように無いはずの7階であろうが

なかろうが出れない事には変わりないので

俺は本来は陽子さんの事も気になるし

落ち着いている場合では無いのだが

何も無いリビングの中央にドッカリと

胡坐をかきタバコに火を点けて一服していた。

「あるはずの無い7階に

あるはずの無い地下に

エレベーターで降りていく

家族・・・

それに踊り場で居たデカイ

裸のおっさん・・・

なんやねんっこのマンション・・・

ふぅ~」

タバコを吸いながら今日ここに

来てからの事を考えてみる俺では

あるがオカルト好きな俺でも

今日のこの経験は北尾のマンションで

体験した絵画事件に次ぐ奇怪さである。

「武市情報が正しければ

このヤニが無くなるまでには

俺は元の踊り場に戻れるか・・・

はたまたここと繋がっている

現実の空間に戻れるか・・・

まあもうすぐ元に戻るやろ・・・」

周りには誰も居ないので自然と

頭で考えている事もボイスとして

発声してしまうのは人の性なのだろうか。

そんな事を呟きながら愛用の携帯灰皿に

タバコの灰を落としながら火を点けた

1本をもうすぐ吸い終わる。

「まあ・・・

ここが何処か誰の部屋かも

解らんしおそらくは

現実世界と隔離されてるような

空間のような気もするから

そのへんに灰捨てても良さそうな

もんやがな・・・

万が一引越ししたての

レディの部屋とかあったら

紳士にあるまじき行為である

事になるからなぁ」

俺は携帯灰皿の中に短くなった

タバコを詰め込み携帯灰皿の

蓋をパチッという音をたて

閉めるとポケットに入れた。

そしてさあ出れるぞと思い

立ち上がり部屋をあてもなく

歩いているが一向に何も

起こる気配はない。

「武市~!!!

出れんや無いか~!!!」

俺は大声で聞こえるはずも無い

武市に怒りの矛先を向けるが

全く持ってお門違いではあるが

今は誰にキレる事も出来ないので

仕方が無い。

「あいつ

明日耳やな・・・

いや武市の耳だけじゃ

この怒り収まらず・・・

北尾もついでに耳や!」

果たして俺に明日があるのかという

事は別として関係のない北尾の耳に

まで被害が及びそうな程の怒りを

感じているのはただただ4階に残して

きた陽子さんの身に何かが起こっていそうな

嫌な予感がここに居る間も大きくなって

きているからに他ならない。

ヤニ作戦が失敗に終わった俺は

もうこうなれば強行突破しかないと

思い玄関に走り玄関のドアを蹴り捲る。

シュンッ!シュッ!ブンッ!

「うおらぁぁぁぁっ!!

往生せいっ!このクソドアッ!!」

足に痛みは感じないし

そもそも蹴っているのに

当たっているのに足がドアに

インパクトする感触が無い。

空振りをしているわけでも無いのに

当たっていないのだ。

「なんやねん・・・

あの窓ガラスと同じか・・・

殴ったり蹴ったりが

そもそもできんという事かい?」

しかしそれでもやるしかない

1発くらい当たるやろという

根拠のない理屈にしがみつく

しか今の俺にはこの局面を打開

する方法も見当たらずに今日1日

相当疲れているはずの俺の体力の

限界も考えずに再びドアに蹴りを

連発する。

「開かんかいっ!

おらっ!

このクソドアッ!!」

ビュンッ!ビュンッ!!

アカン・・・

開かんしアカンわ・・・・

「上手い事言うてる場合ちゃうねんっ!

俺のアホッ!」

こんな時にでもしょーもない事を

考えてしまう自分の脳みそを

味噌汁にしたろかと思いながら

俺は蹴り捲っては疲れて

へたり込みまた立ち上がっては

蹴り捲るという動作を繰り返して

いるといよいよ体力の限界が来て

意識が朦朧としてくる。

「ハァハァハァ・・・・

か~ごめか~ごめっ

か~ごの中のと~りは~」

無意識にカゴメカゴメを歌いながら

自分を奮い立たせまだドアを蹴り捲る

俺は既に自分自身の意志で動いている

感覚は無かった。

『ヒコよ・・・

汝はこんな所で生涯を終わらせる

事叶わぬ男・・・

汝にはまだ成し遂げぬばならぬ事在り・・・

さあ立ち上がりこの程度の

苦行その足にて乗り越えるが良い・・・』

俺は朦朧とした意識の中

カゴメカゴメの歌を歌いながら

フラフラしているとそんな声が聞えた

ような気がした。

その声が聞えた?

いや脳に直接語り掛けられるような

感覚を受けた時

俺は幼少の頃、車に撥ね飛ばされた時に

助けてくれたと思える俺を守っている者の

存在を思い出していた。

あづま・・・

誰も居ない空間であろうが口に出さなかったのは

幼少の頃にあづまから親に言われたいいつけのように

あづまの存在を口に出してはいけないと言われた

ような微かな記憶がまだ潜在的に深くそれでも

強く残っていたからだ。

立ち上がった俺の両足は膝から下が

赤くその赤を覆うように銀色に輝いて

いたが意識が朦朧としている俺自身は

そのことには気づいていない。

そしてもう何度蹴ったか解らない

ドアに先程までと同じように右中段蹴り

左上段蹴り、そして再度右上段蹴りを浴びせる。

すると今度はドアを蹴った確かな感触と

共にドアがぶち破れた。

バギッ!!

「おっ・・・・お~!!

開いたっ開くんやんけっ!

なんや開くんやないかいっ!」

さっきまでの朦朧としたトランス状態の

ような精神状態はドアが開いた瞬間解除された

かのようにいつもの俺に戻るとやはり

かなり肉体に疲労感を感じる。

しかしドアが開いたからには外に出て

俺にはやるべきことがある。

陽子さんの安否確認!

まずそれだと思い蹴破った玄関口から

出ると俺はまず振り向いた。

「はぁ?407?

ちょっと待て・・・

俺は今まで407号室に居たんか?」

てっきり無いはずの7階と思っていた

部屋の俺が蹴破ったドアは4階の407号室の

ドアであったようだ。

もう意味解らん・・・

そもそもが意味の解らん家族に

意味の解らんおっさんにでくわした

所から始まってんねん。

もう今更どうでもええわ。

そう思いここが4階なら陽子さんの部屋は

近いと思い急ぎ403号室へ向かおうと思う

俺にドアを蹴破った音で起きたのか

そもそも寝ていなかったのかは解らないが

406号室から眼鏡をかけた中年のしょぼくれた

おっさんが少しドアを開け顔を覗かせている。

406号室の横には

【KANBAYASHI】

と生意気にもアルファベットで

こじゃれた表札を掲げていた。

「あの・・・

隣に引っ越してきた方ですか・・・?

今なんかバキッと・・・・」

おどおどした態度で顔を覗かせ

全身丸事出て来ない態度にその話し方が

勘に触った俺は陽子さんの部屋に

急いでいた事もあり

「何見てんねんっ!隣人っ!

お前もバキッとさばくぞっ!はよ寝れっ!」

と理不尽極まりない八つ当たりを

かまし本来隣人では無い

隣人のKANBAYASHIさんに

酷過ぎる言葉を浴びせ陽子さんの部屋に

急いだ。

KANBAYASHIが

「あひぃ~!!」

と言いながらガチャリとドアを

閉める音が陽子さんの部屋に向かう

俺の背中の方向から聞こえてきた。

《扉シリーズ 第2.8章 ロビンフッド12 終わり》



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木林さん面白い人ですね。
実在するなら友達になりたい!
プロフィール

千景

Author:千景
私は他の一夜限りの思い出話という官能小説を今も書き続けております。今回はホラー小説扉筆者の冨田さんより扉の官能部分に当てはまるシーンの描写のご依頼があり引き受けた次第でございます。本編のイメージを壊さないよう精一杯書かせて頂きます。

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