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扉シリーズ 第3.5章 ヨシオのターン8 西口真由佳の章5

私はかごが歪んだ自転車を虚しい気持ちで

見つめながらも木林君が更に話を続けたので

それに聞き入った。

同じく冨田君も先程まで目を閉じ腕を

組み頷いていたが今は目を見開き口を

開きつつある木林君を見ている。

私の自転車のかごを見事に歪めた木林君は

その右拳を今度はポケットにしまい

まだ無実でいる左拳も同じようにスーツの

ズボンのポケットにしまい話し始める。

「それでな・・・

あのカス・・・

ヨシオなんやけど・・・

実は今日、西口さんが

店に来た時に西口さんの

真後ろに憑いてたんよ・・・」

「なんやとっ!」

私が驚く前に先に冨田君が声を上げる。

「えっえ~!!!!」

続いて私も普段は囁くような声しか

出ないのに深夜の公園であるからか

思いのほか大声が出てしまい自分の

声に驚き口を抑えた。

「いや・・・

しかし今は・・・」

やはり冨田君もこの流れであれば

当たり前なのだろうけど

【視える人】

であるらしく私をジロジロ見ながら

不審そうに首をかしげる。

「ああ。

武市・・・

今はおらんよ・・・

ていうかあのカス

俺に気づいて思いっ切り

ガンくれてやったら

すごすご逃げて行きよった・・・」

冨田君は納得したように

また腕を組み頷いている。

あっそう言えば・・・

ロビンフッドで木林君が私を

接客してくれ出した時に

凄く怖い顔で私の後ろの方を

睨み付けていたけど・・・

あっあれかぁ・・

え~でも何で仲間先生が私に・・・

「西口さんに聞いたけど・・・

心霊スポットの類も・・・

それに陽子さんのマンションにも

行ってないんやんな?」

私は私に仲間先生の幽霊が憑いて

いたことがショックですぐには声が

出ずにまず首を縦に振ってから

「うっうん・・・

行ってない・・・」

「そうかぁ・・・

あのカス先週には陽子さんの

マンションに居たんや・・・

なあ武市よ~

あのカスは自分の事を色情霊とか

のたまってたんやけどよ~

その色情霊って

巣にしかおれんとちゃうん?」

木林君が冨田君を見ながら

ポケットに入れていた両手を

出し手の平を上に向け

いわゆるホワイ?

のポーズをとっている。

「ああ。

俺も色情霊と言う物は

見たことも無いが

知識として持っている

範囲では地縛霊と同じ扱い

を受けるはずではあるがなぁ・・・

しかしもしヨシオが何らしかの

力のある者に色情霊化された

のであればもしかしたら

あいつ自由に動けるのかも

知れんな~

あくまで推測でしかないがなぁ・・・

しかしお前が先週その陽子さんて

いう人のマンションで見たヨシオが

今日西口さんにべったりと

憑いていたのであればそう考えるのが

妥当か・・・」

今度は木林君は地面にあった空き缶を

思いっ切り蹴った。

カンッ!!ガシャッ!!

空き缶はすごい勢いで私の自転車のタイヤの

スポークに奇跡のような角度でさっくりとハマる。

その事を普通にスルーしながら木林君と冨田君は

話を続ける。

私は私に仲間先生の幽霊が憑いていたという

事実とその仲間先生の幽霊が私が憧れる陽子さんを

犯したという現実に大きなショックを受けながら

今私の自転車に何の恨みがあるのか軽く私の自転車を

虐待している木林君の行動に小さなショックも受けていた。

「あのカス・・・

まあ自由に動けるんやとしたら

顔見知りの西口さんを狙っていたとしか・・・」

木林君がまた拳を振り上げる。

あっもう自転車は止めて~

「えっ?木林君・・・・

それって仲間先生の幽霊が

私を・・・」

私の願いが通じ木林君が振り上げた拳はまた

木林君のスーツのポケットに戻りひとまず

私の自転車は木林君の怒りの標的には

されずに済んだ。

木林君が私の言葉に一瞬私を見て俯いた。

そして普段は比較的高い声の木林君が

低いトーンで

「西口さん・・・

あいつはもう仲間先生や無い・・・

なあ武市よ~・・・

西口さんに憑いていたいう事は・・・

やっぱり・・・」

私は木林君を見ていた視線を

冨田君に向けると無言で冨田君が

頷いた。

「え~!!

そんな事って・・・

どうして私なの!?」

私は2人を交互に見ながら

本気で意味が解らずにそう聞いてみる。

2人共首を傾げ首を左右に振り答えくれない。

答えてくれないというよりは

2人にも理由が分からないのであろう。

「西口さん・・・

俺らでできるだけ

今後西口さんは守るから・・・

俺・・・

あの時、何かおる気が

してたのに陽子さんから

離れて自販にジュースを買いに

行った事ホンマに後悔してんねん・・・

だから・・・」

木林君は陽子さんを守れなかったことを

悔しそうに歯を食いしばりながら拳を

握りしめその悔しさは本当に私にもおそらく

冨田君にも伝わった。

「・・・うん・・・

ありがとう・・・

木林君・・・」

私はこんな時に頼りになる人なんて

今まで居なかったので木林君がそう

言ってくれた事が本当に嬉しかった。

「木林よ~そう思って

俺昼にお前から連絡を受けた後

伊田さんに会って来たんよ~」

冨田君がやっとベンチから立ち上がった

と思うと背中に背負っていたリュックサックから

何かを取り出そうとしているが冨田君の

リュックのファスナーが開かない・・・

「武市っ伊田さんに相談してくれたんかっ!?

お前ったまにはいやここぞという時は

気が利くやないか~!」

木林君が冨田君にかけより冨田君の

背中をバンバン叩いているが冨田君は

木林君のその称賛に応えようともせずに

まだ必死でリュックのファスナーと格闘している。

冨田君は依然、無言でリュックを開けようと

モゾモゾしているので木林君はその後に

続けて何か言いたそうであったがしばらく

見守るようにしたみたいでスーツの上着の

ポケットからタバコを取り出すとそれに

火を点けてふぅ~と一息入れて無言で

冨田君を見守っていた。

私も仕方なく冨田君を見守りながら

冨田君が中々開けれないリュックに木林君が

イラつき私の自転車に更なる被害が出ないよう

ハラハラしながら見ていた。

⦅扉シリーズ 第3.5章 ヨシオのターン8 西口真由佳の章5 終わり⦆



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扉本編と同じくらい面白いっす!

最近は扉本編の方を読みかならずこっちにも来てしまいます。
西口真由佳ちゃん最高です!
何か可愛いっすね!
プロフィール

千景

Author:千景
私は他の一夜限りの思い出話という官能小説を今も書き続けております。今回はホラー小説扉筆者の冨田さんより扉の官能部分に当てはまるシーンの描写のご依頼があり引き受けた次第でございます。本編のイメージを壊さないよう精一杯書かせて頂きます。

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