2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

扉シリーズ 第2.8章 ロビンフッド7

俺は夜の公園のベンチで

座り話し始める同級生の

石藤啓介の話にベンチの前で

立ちながら缶コーヒーのブラックを

片手に耳を傾けていた。

陽子さんには不本意ではあるが

こんな所に付き合わせて立たせて

いるわけにも行かないので

一応啓介の横に腰を掛けて

もらっているが

そこは陽子さんも浮浪者同然の

恰好をしている啓介の不潔な

容姿に引き気味で隣に座るも

距離は取っていた。

「おい。

ケジスケよ~

お前は耳南卒業後

その吹奏楽の腕を

振るう為に自衛隊の楽団に

入ったんちゃうかったんか?」

陽子さんも距離を取り

啓介に視線を送る。

少しうつむきながら

神妙な面持ちの啓介が

少しづつ口を開きだす。

「ああ・・・

キバの言う通り・・・

俺は自衛隊の楽団に

入隊できたんやが・・・」

「そうやろ!?

仲代や武市もお前が

競馬のGⅠのファンファーレで

出てくるのん楽しみにしてたのに

何でそのお前がこんな所で

浮浪者まがいの格好でしかも

夜道を歩くレディのバッグを

かすめ取るようなセコイ行動に

出てんねんっ!」

俺は手に握るブラックコーヒーの

缶に力を込めながら19歳にして

落ちぶれた姿で俺の目の前に現れた

同級生に憤りを感じながらしかし

それでも怒気は必至で抑えながら

そう言った。

「ああ・・・

本当にキバとこな

姿で再会してしまうとは

面目ない・・・

俺は確かに自衛隊の

楽団には入隊できたのやが・・・

実は楽団も自衛隊は自衛隊で

ある事に変わりはなくな・・・

最初は基礎体力をつけるために

自衛隊の隊員と同じ

訓練を受けなあかんのや・・・

毎日毎日綱昇りや腕立て腹筋・・・

長距離走に武術の訓練・・・

柔道の練習は高校の体育の授業みたいに

あんな生ぬるいもんやなく

マジ落ちさせられるし・・・」

啓介が言うには意気揚々と得意の

楽器を振るう為に入団した自衛隊の

楽団には最初は自衛隊員並みの

訓練が待っていたとそういう事である。

しかし啓介の肉体は

グレードアップしたようには

とても見えない。

という事は啓介はおそらく

その自衛隊のしごきに耐えれず

逃げ出した挙句にここに居るという

推測が俺でなくとも隣で

ハンカチで口元を抑えながら

話を聞いている陽子さんでも

そう思ったと思う。

「お前・・・

気持ちはわかるがなぁ・・・

それで逃げて来たんか?」

高校時代は麻雀や花火の打ち合い

夕飯を賭けたTVゲームなどで

よく遊んだ友人にこんな風に

詰めるような聞き方はしたくは

無いがそこを聞かなければ話は

進まないと思い俺は言葉にして

発した。

陽子さんも啓介を見つめている。

「・・・・・・・・

・・・・・・・・・」

少しの沈黙の後啓介は無言で

首を縦に振りベンチでうなだれている。

「・・・・・

お前実家には帰れんのか?

・・・・

帰れたらあんな所におらんか・・・」

俺は見つけてしまったからには

このまま置いて帰るわけにも行かないし

しかしこの浮浪者まがいの啓介を

俺の家に連れて帰っても

親にドヤされることは目に見えて明らか

うちのオヤジが不審者と間違えて

啓介に突きでも食らわせてしまえば

啓介を助けるために連れて帰ったのに

啓介を再起不能にしてしまう可能性も

ある。

そんな事を考えながら俺は

啓介を眺めていた。

啓介は相変わらずうなだれたまま

で陽子さんはハンカチで口元を

抑えながら俺と啓介を交互に見ている。

そうだ・・・

何の関係もない陽子さんを付き合わせて

いるのでこんな殺風景な公園で

しかも浮浪者まがいの男の隣に

座らせ陽子さんを長居させるわけにも

行かないと思った俺は

もしかしたら・・・

いや・・・

これしかない・・・

後は俺の説得力とこのアホを

どう売り込むかやが・・・

「啓介・・・

お前今の暮らし抜け出せるんあったら

何でもするか?」

啓介は顔を上げきょとんと

している。

「金も入るし空き民家に

不法侵入してスリまがいな

事をせんでええんやから

頑張れっ!今よりましやっ!」

俺は強引にそういうと

「ちょっと待ってな

陽子さんもすんません。

もうちょっとだけ待って

下さい。」

そういうと俺は携帯を取り出し

携帯を鳴らした。

多分まだ店で片付けしてるか

起きている事には間違いないはず・・・

『はい。

もしもし

ヒデ君どうした?

陽子さんはキチンと

送り届けたかい?』

俺がかけた先は

俺のバイト先の

ロビンフッドの

マスターだった。

「あっすんません。

マスター。

まだお店ですか?

寝てはりはしません

でしたよね?

あっちょっと

事情ありまして

陽子さんはまだ

一緒なんですよ~」

そして俺は陽子さんと

徒歩で帰路についていた事

途中で浮浪者まがいの輩に

襲われ陽子さんのバッグを

摺られた事。

その浮浪者が俺の元

同級生であった事。

そしてそいつが

浮浪者になった経緯も話す。

マスターは一々大きく

相槌を入れてくれながら

真剣に聞いてくれている。

「そんな事があったんやね~

しかしヒデ君はキチンと

陽子さんのナイトできれるやない?

立派っ立派っ」

「あっいえ・・・

それはカバン一回摺られてますしねっ

ははっ・・・

あっそれでなんですが・・・

あの・・・

マスターにお願いがありまして・・・」

『うん。

かまわないよ。

その子迎えに行くから。

吹奏楽やってたのなら

音楽に長けてるから歌も

上手いだろうしね。

それに今はただの置物に

なっているピアノも

生き返るかもしれないし

どう?

その子ピアノはいけるかな?』

まだ何も言うてないのに

解ってくれはるとは・・・

実は半月ほど前に

マスターから俺は

店の人員不足で誰か大学生の

同級生でバイトしてくれる子が

居ないか相談されていた。

その時俺の頭には武市と北尾しか

思い浮かばずに2秒で自主的に却下して

マスターには良い奴おれば声かけて

みますとだけ言っておいた。

そしてその言葉を思い出し

啓介なら風呂に入れ散髪に行かせて

髭もそれば見栄えはそれなりに映える。

当分は俺やマスターの服ならサイズは

合うだろうからそれを着て店に出れば良い。

そう思いダメもとでマスターに一度

連絡を取ってみたのだ。

しかし本題を言う前に察してくれた

マスターは既に啓介の経歴・・・

経歴と言っても吹奏楽をやっていて

自衛隊の楽団に入り逃げ出しただけなのだが

その経歴を聞き店でのポジションまで

考慮してくれたうえで軽くOKの

返事を頂いた。

「マスター・・・

僕まだ何にも言ってませんのに・・・」

俺は感動で震えながら声まで震えていた。

『えっ?

その子うちで雇うんじゃないの?

良いよ丁度僕のマンション

空き部屋2つほどあるし

そこに住んでもらえば。

あっ女性が来る時はその子には

何処かホテルに泊まってもらうけどね

ははははっ』

「あっマスターちょっと

待って下さいね。」

俺は一旦電話を受話器から離し

「おいっケジスケ?

お前楽器でピアノは弾ける?」

啓介は電話で話して居る俺を

ずっと見ていたようで

「ああ。

ピアノなら子供の頃から

ずっと習ってたからなぁ・・・」

その返答を聞き俺は

「あっマスターすみません。

僕の友人、ピアノもいけるみたいなので

是非お願いしますっ!」

本人の意思は関係なく俺は

マスターにお願いしたが啓介も

ここで野垂れ死にするよりは

良いだろうと思い両方に多少

強引に話をこぎつけたが

啓介的にも好きな楽器ができるのだし

マスターも人員不足解消になるし

我ながらこれで良かったと思い

納得していた。

電話を切った俺はマスターが迎えに来て

くれるというのでマスターが車で

来てくれて啓介を紹介するまでもう少し

ここで陽子さんに付き合って待ってもらうよう

頭を下げ陽子さんも良かったねと笑顔で了承

してくれた。

当の啓介も最初はレディースバーの仕事って

俺できるかな?

と不安がっていたが

マスターはええ人やし先輩方もお客様も

ええ人ばかりやから大丈夫と啓介を励まし

ているとマスターの国産の高級セダンが

到着し啓介を紹介しマスターに引き渡し

何度も啓介と2人でお礼を言いながら

小汚い啓介をマスターの高級車に乗せるのは

気が引けたがマスターは気にもしていなかった

ようであっさり啓介を乗せ走り去って行った。

俺はマスターの消えて行く車を見ながら

男の器というものを感じていた。

そしてやっと本来の任務の陽子さんを無事に

送り届ける事を再開できるのであった。

《扉シリーズ 第2.8章 ロビンフッド7 終わり》



ANIME RANKING アニメ・同人・コスプレ専門サイト
コメントの投稿
非公開コメント

プロフィール

千景

Author:千景
私は他の一夜限りの思い出話という官能小説を今も書き続けております。今回はホラー小説扉筆者の冨田さんより扉の官能部分に当てはまるシーンの描写のご依頼があり引き受けた次第でございます。本編のイメージを壊さないよう精一杯書かせて頂きます。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
扉裏口通過人数
スポンサーリンク
ランキング
にほんブログ村 小説ブログ ライトノベル(小説)へ
にほんブログ村 アダルトブログランキングへ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR