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扉シリーズ 第3.5章 ヨシオのターン10 西口真由佳の章6

「武市よ~・・・・

何を取り出そうとしているかは

解らんがそのリュックは

まだ開かないのかね?」

引き続きリュックのファスナーを

開けようと頑張っている富田君に

短くなった煙草を親指と人差し指で

火種を握りつぶしながら木林君が

右足のつま先でトントンと地面を

打ちながら言う。

無言で見守る私も何故かこの

空気に耐え切れず木林君が素手で

煙草を消したことにも驚きたかったが

それ以上に驚くことが今日は沢山あった

のでそこは普通にスルーできた。

私が気を使い

「あの・・・

富田君・・・

ファスナー噛んでいるよね?

ちょっと見せてみて・・・」

と遠慮気味に富田君が座る

ベンチの前にしゃがみ込み

リュックに手をかけてみる。

煙草の吸い殻を携帯灰皿に

しまいながら木林君もベンチに

寄ってくる。

「お前よ~

いくらなんでも

どんくさ過ぎるやろ~

背中丸めてリュックに

ウホウホ言うてる

まるでバナナが取れん

ゴリラやないかっ

ははははっ」

木林君が身も蓋もない

事を言いながら笑って

いたが私は噛んでいた

リュックのファスナーをすぐに

元に戻すと

「あっ富田君

これで開くと思うよ」

と富田君にリュックを渡した。

「木林よ・・・・

俺に文明的な物を

持たせた親が悪いんよっ

俺には洒落たリュックなんかより

手さげ袋のほうが似合っていることは

お前にも解るやろう。

あっ西口さんありがとうっ」

富田君がそう言いながらリュックを

受け取り中を開いた。

「ははははっ

ゴリラにはリュックすら

文明とかほざいてんよ~

おっ?それは何かね?

武市君?

お前まさかレディの家に

お邪魔するからって

お洒落の為に手袋を

用意してきたとか言うんちゃう

やろな?」

確かに富田君がリュックから

取り出したものは一対の黒い

手袋。

それとノートをちぎって何かが

書かれてあるメモ用紙のような

物だった。

「うむ。

手袋である事には変わりないが

これはただの手袋にあらずや。」

「ほう?どうあらずなんや?」

木林君が富田君が取り出した

手袋を片方受け取りながら聞く。

「え~と・・・・

名前は霊具:霊破:試作R01や

伊田さんが急で一対しか渡せんから

すまんとキバちゃんに伝えてくれとの

伝言も頂いている。」

富田君がノートの切れ端を読みながら

手袋の名前を読み上げる。

れいぐ?れいは?・・・

しさくあーるぜろいち?

何か変わった名前の手袋を富田君と

木林君が片方づつ手に持ちながら

話している。

「うむ。

伊田さんがくれたということは

ただの手袋にあらずやな~

デザインは黒の革製で確かに俺好みよ。

さすが伊田さんは解っていらっしゃるな~

察するところ・・・

武市よ~これを手に付けると

霊体の耳を引っ張れるということかね?」

えっ?えっ?

霊体の耳を引っ張るって・・・?

私はボーッとした表情で2人の会話の

意味にも言葉の使い方にも付いて行けず

ただ木林君と富田君の顔を交互に見ながら

視線を落とした時に視界に入った私の自転車の

タイヤのスポークにスッポリと嘘のように

ハマっている空き缶を抜いて良いものか

どうか迷っていた。

「然り。

これをお前の手に装着すれば

微弱な霊であれば掴めるし

殴れるし無論耳も引っ張れる。

しかし試作品であるからある程度の

強靭な霊には通用せんとの事やから

気をつけてくれと伊田さんが言ってたわ。

しかし微弱な霊なら俺らの元々の霊力なら

一撃で散華可能らしいわ」

「ほう・・・

そいつは便利な手袋やな~

また伊田さんの店に飲みに

行ってお礼言わなあかんな~」

「それともう1つ・・・

伊田さんが製作段階で

そこら辺にふらふらしていた

むかつく顔したおっさん

の霊をぶち殴った時に

加減せんと殴ったら

一瞬で手袋灰になった

らしい。

その時よりも手袋の強度は上げているから

ずいぶん持つようにはなったらしいが

耐久力は最初に霊体を殴ってから

せいぜい1時間くらいと言っていたわ。」

「そうかぁ・・・

まあそれでも元々

丸腰で行こうと思って

たんやからな~

それに比べりゃ随分楽になったよっ!

武市ええ仕事するやないけ~

伊田さんにも感謝やなっ」

木林君は嬉しそうにそう言いながら

富田君から受け取った黒い指が出ている

手袋を右手に装着した。

富田君は左手に装着しながら

「一対しかないから

西口さんは木林か俺の後ろに

常に隠れていてな~」

「ああ。

レディを戦わせる

わけにはいかんからな~

まああのマンションが

カスどもの巣になっていても

この木林ナックルと伊田さん

策のえ~と・・なんとかゼロイチが

あれば大丈夫やさかいっ」

木林君が手に装着した黒い

手袋を私に向けてそう言った。

「うん・・・」

ありがとう・・・

私も最初は凄く怖かった

けど何か木林君と富田君見てたら

怖くなくなってきたよ・・

ははっ・・・」

この2人の緊張感の無さと

何か今からちょっと遊びに

行くような感じののりに私も

今でも半ば信じられない幽霊という

物が沢山いる場所に行くのが

本当に怖くなくなってきていた。

もしかしたらこの2人はかなり

以前・・・

それこそ私がマネージャーをしていた

陸上部で一緒に練習に明け暮れていた

頃から陰でこういう体験を幾度となく

していたのかな?

そう思うほど彼らの今の行動は日常的な

感じがしてならなかった。

「ほな・・・

行こかっ」

木林君がそう言いながら公園の出口へ向かい

歩き始める。

「うむ。」

富田君がうなずき立ち上がると

私も2人に続き自転車を押しながら

付いて行こうとした。

ガチャッ!!

「きゃっ!」

私は自転車のタイヤのスポークに

木林君が蹴った空き缶が見事に

ハマっていた事を忘れ自転車を

押してしまいそれが引っ掛かり

自転車が進まずにつんのめって

しまい小さく悲鳴を上げてしまった。

「どうしたっ!」

「西口さんっ!」

2人が急いで振り返り私の方へ

駆け寄ってくる。

「あっうん・・・

何もないごめん・・・

ちょっと自転車が・・・」

・・・・・・

2人が私の自転車のタイヤを

同時に見る。

「ぎゃははははっ

そういや~木林の

蹴った空き缶が見事に

西口さんの自転車のタイヤに

刺さってたな~」

「ぎゃははははっ

あの時は見事すぎたし

真剣な話してたから

スルーしたけど

これめっちゃおもろいやんっ!

ぎゃはははっ」

え~!今!?

今ウケてるの~

ってかこれはあなたが・・・

もう~ひどい~

「ちょっと~木林君が

蹴ったんでしょ~

笑いすぎ~」

私が膨れた表情で

そう言うと

「ぎゃはははっ

ホンマや木林笑いすぎやし

タイヤに缶刺さりすぎやってっ

ぎゃははははっ」

「ぎゃはははっ

ごめんごめんっ

西口さんホンマごめんっ

あかんっ腹痛いっ・・・

あっちょっと・・・どいてな」

そう言いながら木林君が

自転車を支えている私を

どかせると再び木林君の

あの悪魔の蹴りのモーションに

入る。

私は思わず私の自転車がまた

蹴られるのかと思い目を塞ぐと。

ビュンッ!!ガシャッ!!

カランカランカランッ・・・

と木林君はどうやら

私の自転車のスポークに

刺さっていた空き缶を蹴った

らしく空き缶は暗闇へ転がって

行き見えなくなった。

「ほな行こか」

そう言いながら木林君と富田君は

笑いながら何事もなかったかの

ように歩き出した。

私はカゴも直して欲しい・・・

とは言えずに自転車を押しながら

2人に付いて行き歩き出した。

⦅シリーズ 第3.5章 ヨシオのターン10 西口真由佳の章6 終わり⦆



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プロフィール

千景

Author:千景
私は他の一夜限りの思い出話という官能小説を今も書き続けております。今回はホラー小説扉筆者の冨田さんより扉の官能部分に当てはまるシーンの描写のご依頼があり引き受けた次第でございます。本編のイメージを壊さないよう精一杯書かせて頂きます。

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