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扉シリーズ 第3.5章 ヨシオのターン22 ゴリラと持村そして木林

俺たちは蜘蛛取町に入りものの数分で持村が

「あの建てもんや~あれが

美智子さんの住むマンションや」

と運転しながら4階建てくらいの

マンションを指差しそう言う。

俺はそのマンションの前にある

駐車場に目を向けると見覚えのある

白の国産高級車が止まっている。

そしてその白の国産高級車の

ボンネットに無礼にももたれかかる者あり。

男は黒のカッターシャツに黒の綿パン。

黒の先のとがった革靴に黒のサングラス。

そして偉そうに高級車のボンネットに

もたれかかったまま煙草の紫煙を噴き出していた。

一見このマンションの住人の家に取り立てに

きた闇金業者に見えるがそうではない。

奴はただの大学生であった。

そして俺が助っ人として連絡を取った男

木林である。

「モツよ。

あそこで取り立て屋みたいなやつが

おるやろ?

あれが助っ人や。」

「ぷぷぷっ!!

あいつ変わっとらんな~

大学に入ってヤクザな見た目に

拍車かかってるやないけ~」

持村は木林が1人で醸し出している

シルエットに笑気を受けながら

木林が止めている車の横に自分の

車を停車する。

そして俺が車を降り運転席から

持村も降りる。

「武市~!!

アズサのアホやはり電話かけても出ん・・・

おっ!?お前!?

ホッパー!!ホッパー持村やないかっ!?」

木林は持村の事をバッタに似ているという

理由からホッパーと呼んでいたこともあった。

「お~!キバ~久しぶりやのうっ!

お前相変わらず黒いのう~」

2人は足早にお互いの距離を詰めると

握手をしながら久々の再開を喜んでいるが

俺たちはここへプチ同窓会をしにきたのではない。

俺は早速マンションへ向け意識を集中してみるが

やはりここも昨夜の陽子さんの住むサンハイツ鶴澤ほど

ではないが巣になりかけている。

現に居る・・・

のは解る。

木林も駐車場で煙草を吸いながらそれに気づいていたのか

持村と握手を交わしながら表情が厳しくなる。

「モツよ・・・

お前がなぜ武市と一緒に居るかは

後でゆっくり聞くがお前がこの

霊感ゴリラとここに来たという事は

お前に近しい人がこのマンションに住んでいて

今何らしかの不可解な事に巻き込まれていると

いうことかね?」

おそらく木林はあっちゃんの部屋に踏み込まず

この駐車場で俺たちを待っている間も

このマンションから放たれる忌々しい霊気を

感じながらここに俺とともに来る人間の知り合いが

このマンションに住んでいてあっちゃんと似たような

状況であると推測していたのであろう。

さすがは木林話が早く済む。

それだけ奴も早くあっちゃんの部屋に乗り込み安否の

確認をしたいのだと奴の地面をコツンコツンと先の

尖った靴で何度も打っているのがその証拠であろう。

「ああ。

斎藤さんも住んでるんやてな~

実は俺の同僚で今は俺の彼女でも

ある人がここに住んでいてよ~

急に会社に来なくなったし何度か会いに

来ても最初はまともに会えずにな。

やっと会えたと思ったら訳の分からん事

言われて謝られて急に泣き出して最後は・・・

色んなもんぶつけてきたから玄関から入れずに

その日は俺は退却したんやがな・・・

それで悩んでいたところ今日偶然冨田と

会ってよ~飯食いながら話していたら

彼女は鬱やら精神的な病気よりは

その・・・なんな・・・

霊的な?事が原因ちゃうかと冨田が

言うからな~俺も思い当たるふしあったし

冨田に一度見てもらおうと思ってな・・・」

俺は腕を組み頷きながら持村の話を聞いていた。

相変わらず木林は靴をコツンコツンしながら

何に対してかは分からないがイラついている。

せっかちな奴の事だからここで5分ほど待っていただけ

だが早くあっちゃんの部屋に乗り込みたくて仕方ないのであろう。

「そうか・・・ってかモツッ!!

お前同僚の彼女って言うたら

王電のキャリアウーマンかい?

まさか年上とかぬかすんちゃうやろな~?」

やはりこんな時でも木林は木林であった。

持村の彼女が霊障であるかもしれないという

話しより【持村に彼女が出来ていた事実】に食いつく。

握手していた手は今は持村の耳を引っ張っている。

「いててっキバッ久しぶりやとお前の

耳引きは効くって!!

しかしキバよこの俺にそれは虞問!

3年先輩で彼女は大卒入社よっ!

今は25歳よっ!

いててっ!」

木林の持村の耳を引っ張る手に捻りが加わった事は言うまでも無かった。

俺も木林と同じ気持であったのであえて木林は止めずに持村が耳を引っ張られて

いる事は無いように話を進める。

「しかし木林よ。

持村の彼女を拝ませてもらおうにも

彼女のご友人の王電のキャリアウーマン

の美女を紹介してもらおうにもとにかく

このマンションにうよっている者どもを

何とかしてモツの彼女とあっちゃんにおそらくは

起きている霊障をなんとかするのが先やろ?」

木林はやっと持村の耳を離すと色白の持村の

左耳だけが赤くなっていたが持村の耳の痛さなど

奴が王電の25歳のOLと付き合っている幸せに

比べれば当然の代償だと思い持村の耳に同情の余地はなく

しかし何も罪のない持村の彼女、神尾美智子さんと

我々の同級生の斎藤アズサは救わぬばならぬ事に変わりはない。

「しかしよ~何とかしようにも

結構いてそうやぞ~?

武市策は?」

「うむ。

俺もモツに会ったそのままの

足で来てしもたからなぁ・・・」

木林はふっと笑うと自分の車の

いや木林の親父さんの車の

後部座席のドアを開けそこから

首からかけるようなバッグを

取り出し首からかける。

バッグまで黒であったことを俺も持村も

あえて突っ込まずに俺も左耳を抑えている

持村も木林を見ている。

「俺な・・・

アズサが学校けえへんのんよ~

昨夜の陽子さんのような目にあってるん

ちゃうかな~っていう夢を昨夜見てな・・・

昨夜ていうか朝方かな?

昨夜の今日やからかも知れんが

何か西口さんが言うてた陽子さんの

急に来なくなった感じや親しい人との

距離の置き方とかが似てるしもしかしたら

あの色情霊?ヨシオみたいなのんが

他にもおるんかとか思って今日朝から

伊田さんの家に行って同級生にもしかしたら

霊障かも知れんやつがおるって相談してきたんよ。

お前づてで借りたグローブ壊してしもたことも

ついでに謝ってきた。」

木林は首から吊るしたバッグを開きゴソゴソとしている。

「お前・・・

今朝か・・・?

やること早いなぁ・・・」

俺は今朝一番で伊田さん宅を訪れていた

木林の行動力に驚くばかりである。

持村はまだ左耳を抑えながら俺たちのやりとりを聞いている。

「それでな。

アズサの住むマンションがこの

ゴールデンレジデンス蜘蛛取って

言ったら伊田さんが店に行くときに

この道通るらしいんやけどあそこには

よくないものがたまに居たなって

言ってたわ。

まあそこまで話すまでに朝早く行き過ぎて

伊田さんちょっと嫌そうあったけどよ~

それどころやなかったからよ~

俺もアズサ見にきたはええけど

昨日の西口さんや陽子さんのような

感じになってても丸腰やとなんもできんやろ?

それで伊田さんに頼み込んで即興で作って

もろたんよ?

靴一足に手袋一対。

丁度ええやろ?

俺が靴もらうからお前ら

片手づつこれつけていけよ。

俺はアズサの所に先に行くから

武市、モツについていってやってくれよ。」

木林の行動力に今まで何度も驚かされて

来たが今度ばかりは木林に感謝せぬばなるまい。

あの浮遊霊を殴れるグローブに蹴れる靴。

昨日実際に使い耐久力には問題はあるが

身に着けていて使用可能な間は雑魚霊なら

瞬時に散華させれる優れ物である。

さすがは伊田さんの作品と思わされる一品であった。

持村が片方のグローブを手渡されまた細い目を

見開きこれはなんなんだ?

というような表情で俺と木林を見ている。

俺は頭の良い持村になら簡潔に説明したら

理解するであろうと思い

「モツよ。

今からあのマンションに乗り込むわけやが

俺が人が見えざらぬ者が見えるという

事はさっき説明した通り。

木林もそうであるんよ。

そしてなあそこにはおる。

もしお前の目にも見えるほどの者が

居たらそのグローブをはめた方の

手で迷わずお前の渾身の一撃を加えろ。

お前に害を及ぼす可能性が極めて大の霊であるからな。

そしてそれがお前の彼女を苦しめている者でもある。」

持村は右手に黒い手袋を嵌め左手で手袋を触りながら

俺の話を聞き

「幽霊ってやっぱりおるんや~

そうかぁ・・・」

とだけ言い何かを決意した表情で大きく頷いた。

木林はこっちが終わったらそっち見に行くから

部屋番は?と聞き持村が205と伝えると木林は

伊田さんに作ってもらった靴を履き階段へ向かい

走っていた。

途中、俺には最初から見えていた鍬を持った老人の

霊が木林に襲い掛かり木林の中段の蹴りを喰らい

散華していく様を持村は見ていて

「あっ・・・

あの爺さん幽霊あったんかぁ・・・」

「おッ…お前あの爺さん見えてたんか?」

と聞くと

「ああ。

何かこのマンションに似つかわしく

ない恰好してるな思ってたよ・・・」

と言い持村もこの俺に会ったりこのマンションに

来たことにより霊的能力が覚醒されていっている

事を俺は感じていた。

⦅扉シリーズ 第3.5章 ヨシオのターン22 ゴリラと持村そして木林 終わり⦆



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プロフィール

千景

Author:千景
私は他の一夜限りの思い出話という官能小説を今も書き続けております。今回はホラー小説扉筆者の冨田さんより扉の官能部分に当てはまるシーンの描写のご依頼があり引き受けた次第でございます。本編のイメージを壊さないよう精一杯書かせて頂きます。

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