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扉シリーズ 第3.5章 ヨシオのターン30 斎藤アズサの部屋にて

冨田の脇で、俺は近づく幽霊たちにモツムラナックルを
お見舞いしながら、美智子さんの部屋と同じ並びにある
203号室に住む、高校時代の同級生の斎藤アズサの部屋に向かった。

冨田に美智子さんをおぶわせておくのは気が引けるし
立場上いかがなものかとも思ったが、ガタイを考えた時に
木林が与えたこの役目は、適材適所であると改めて思った。

ゴリラにこそ相応しい役目であるだろう。

先に斎藤さんの部屋の前に、美智子さんをおぶった冨田が
着くと、俺が横から一応インターフォンを鳴らす。

「モツよ、あっちゃんも、おそらく正気やないっ
玄関開けてくれっ!」

既にマンションの2階の廊下にまで浸食してきている霊たちが
俺たちに近づいてくるのを見ながら冨田が叫ぶ。

近づいてくる霊たちを獣の・・・いや・・ゴリラのような形相で
にらみつけると俺たちに近づいてきていた霊たちが、怯えたように
踵を返し、隣の204号室の玄関をそのまますり抜け入っていった。

それを見て俺は、甲田福子さんの甥っ子と言うのは本当なんだと
改めて感心する。

204号室の住人に少し申し訳ない気持ちになり表札を見ると
【堀江】
と掲げられていた。

堀江さん、すんません!

と心の中で呟き俺は、斎藤さんの部屋の玄関のドアを開ける。

玄関を開け見える景色は、美智子さんの部屋と同じつくりの
マンションであるのに、先ほどの美智子さんの部屋と本当に
同じ並びにあるかと思うほど明るく感じた。

いや・・これが普通なんや、別段明るい言うわけやないし、さっきの
美智子さんの部屋がやたら暗かったんやなぁ・・・

俺は玄関先で一応

「斎藤さん~久しぶり~持村やで~
木林にこっちで待つように言われてるから
お邪魔するで~」

そう言いながら俺は玄関から手洗い、浴室を抜けると
リビングへ入る。

部屋はやはり電気もついていないがこの時間帯、そんなに暗くは
感じず、むしろ先ほどまで居た美智子さんの部屋と比べれば明るく
感じるほどの部屋に、先ほどまで居た美智子さんの部屋が異空間に
なっていたんだなと思わされる。

俺に続いて冨田も

「あっちゃん、お邪魔するで~」

と言いながら入ってくる。

斎藤さんはリビングのさらに奥のベッドのある寝室で
寝ているようで布団をかぶり顔は壁側を向いていたので
俺からは高校時代に比べ明るくなった髪の毛に包まれた
斎藤さんの後頭部しか見えなかった。

「寝ているようやな・・・斎藤さん」

俺は声を落とし小声で冨田にそう言った。
冨田も同じく気を失っている美智子さんを斎藤さんの
部屋のリビングのソファに寝かせる様に下ろすとさすがの
ゴリラも美智子さんをおぶったまま走り腰にきたのか
腰を抑えながらドッカリとソファの前のテーブルの横に
座る。

それを見て俺も冨田に向かい合うように腰を下ろした。

「冨田ぁ・・・美智子さんは
もとに戻るんやろかぁ・・・」

今日この小一時間ほどで起きた事が、昨日までの俺の生活とは
かけ離れていて俺はいろいろ知りたいこと聞きたいことがあったが
今率直に思う事を冨田に聞いてみた。

「う~ん・・・
こればっかりは、本人の霊的な耐久力や
精神力によるからなぁ・・・
普通は日が経てば少しづつは元の美智子さんに
戻るはずなんやが・・・
あっちゃんにしても美智子さんにしても
言わば俺や木林と違い、お前と同じ普通の人やからなぁ・・・
やっぱりそんな人には精神にかかる負荷が大きいと
思うわ・・・」

冨田が神妙な表情で俺を見ずに俯きながら小さな声で俺の
問いかけに応えた。

「そうかぁ・・
でもよ~美智子さんも・・・
それに斎藤さんももうこんなところに
住ませておけんよのう~」

俺はまた素直にそう思う事を言う。

「ああ・・・
完全に穴が閉じたわけちゃうやろうし・・・
俺らが一時的に排除してもあいつら
浮遊霊と言うより浮遊念やからなぁ・・・
恨みや辛み、妬みや蔑みという人のマイナス感情は
今も昔もこの世から無くならん。
そんなもんを抱えたまま死んでいった
人はゴマンとおるやろし、俺の予測ではあの
風呂場の闇や白い全裸のガキの口の闇、
あれはそういった感情を抱えたまま
死んだ奴らを無限に呼び寄せるもんやと思うわ・・・」

冨田の言っている言葉は俺には理解できにくかったが
言っている意味は何となく伝わった。

冨田の言っている内容だと結果、このマンションは今後も
美智子さんや斎藤さんにとって危ない場所であるのには
変わりがない。

「そうかぁ・・・
かと言って現実問題・・・
俺も今まだ実家やし・・・
しかもいきなり美智子さんと同棲というのもなぁ・・・」

「あっちゃんの事もあるしなぁ・・・
そんな難しい問題は木林の領域よ・・・
奴が戻ってきたら、奴も2人を今ここに
住ませておくことは危険と感じているはずやから・・・」

冨田がやっと顔を上げ俺を見ながらそう言った。
その冨田の目が何やらチカチカ点灯しているように
見えたのは俺の錯覚か?それとも今日のこの経験に
より俺もこいつらのように、もう昨日までの俺とは違う俺に
なっているのかは今の俺には解るすべもない。

「そうやのう・・・しかしキバは変わらんなぁ・・・」

俺は久々に会った同級生との再会がこんな形で
残念ではあったがこいつらが居なければ美智子さんは
取り返しのつかないことになっていたかも知れないかと
思うと、こんな形で再開出来たことは何かの導きかも
知れないとも思い感謝する。

そんな中、俺と冨田の間に少しの沈黙が流れたが、斎藤さんの
玄関を勢いよく開けた人間により静寂にとびっきりのやかましさ
が加わる。

「あいつらウジャウジャきもすぎるんよ~!
向こう粗方片付いたけど、キリ無いから
もうほってきたわ~!!」

俺と冨田が寝ている斎藤さんに気遣い小声で会話を
交わしていた事に意味があったのかと思うほどの大声で
叫びながら木林が斎藤さんの部屋に到着した。

⦅扉シリーズ 第3.5章 ヨシオのターン30 斎藤アズサの部屋にて 終わり⦆






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プロフィール

千景

Author:千景
私は他の一夜限りの思い出話という官能小説を今も書き続けております。今回はホラー小説扉筆者の冨田さんより扉の官能部分に当てはまるシーンの描写のご依頼があり引き受けた次第でございます。本編のイメージを壊さないよう精一杯書かせて頂きます。

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