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陽子さんの大きな胸の乳圧を

腕に感じながら俺は車に陽子さんを

乗せるわけには行かないので徒歩で

陽子さんを自宅のマンションへ送る

為に今街灯もほとんどない寂れた

民家が立ち並ぶ通りを歩いている。

車では12~3分の距離なので

あるが徒歩だとやはり30分くらいは

かかりそうである。

「きゃっ!

何か今あの家の

門の中に何か見えた~」

腕に絡みつく乳圧が強くなるのと

同時に陽子さんと俺の距離が

さらに縮まる。

これはこれで嬉しいのだが

やはり俺はアズサ同様

怖がりの女性は苦手のようだ。

正直一緒に歩くと歩きづらくて

仕方が無い。

アホアズサなら煩い!

何もおらんやないかっ!

と一喝もできるが

年上のレディであり

無事に送り届けると約束

した手前そういう訳にも

行かずに俺は

「そうですか?

ほなちょっと

見て来ますさかい

ここで待っててくださいね。」

と陽子さんに言うが

「いや~

ヒデ君と離れるの

怖いよ~」

俺は仕方ないな~

と思い腕に乳圧を感じながら

何も無いと思うが恐らく人の

住んでいないであろう民家の

門の中を調べに行くことにした。

「まあ。

どうせ前通らなアカン

わけやしほな陽子さん

外側歩いて下さい。」

と俺は散々良い思いをした

右腕に左腕にもええ思い

さしたってなと心の中で

言い陽子さんを俺の右側

から左側に移動するように

言い今度は左腕に乳圧を感じ

ながら陽子さんが何か見えたと

言ったとても人が住んで居なさそうな

民家の前に歩を進める。

俺も武市程では無いが

ある程度ややこしい者が

そこに居るならば感じることは

できる。

今俺の妖怪センサーもとい

霊体センサーは反応していない。

あの民家には何も居ない。

そう思いながら左腕に感じる乳圧が

歩くたびに強くなる事だけを感じて

居た時・・・

うん?

霊の類はおらんが・・・

陽子さんの言う事も

まんざら見間違いやないかも・・・

今度は俺の武術経験者としての勘

生きた人で怪しい者、俺に敵意のある者

何か存在が不愉快な者がそこに居ると

いう気配を感じる。

いてるな~

これ何かおるわ・・・

「陽子さん・・・

俺から離れんどいて下さいね。

あの家の前はもう素通りしますから」

「えっえっ・・・

何か居るの?

ヒデ君怖いって~」

左腕に感じる乳圧は陽子さんの

豊満な両胸に俺の左腕が挟まれる

形になりさすがにこれだけくっつかれると

あの民家に何かが居ても瞬時に動けそうに

無いが猫かこの辺ならまだイタチも

居るかも知れんしと思いながらその民家の

前を通過した時・・・

ガサガサガサッ!!!

何かが突然暗闇から出て来た。

そしてその何かは俺の足に体当たりを

食らわせるとそのまま陽子さんの左腕に掛けて

いたバッグを引きむしるように取り

猛ダッシュで俺達が歩いてきた道を

国道へ向かい駆け抜けていく。

ドサッ!

「きゃ~!!

痛いっ!!

あっ私のバッグ!!!」

陽子さんは何者かにバッグを

引きむしられた時に尻もちを

ついていて俺は陽子さんに駆け寄り

腕を引っ張り起きる手助けをし

「あのカスッ!!

あっ陽子さん大丈夫ですかっ!

俺あいつ追いかけますから

ここで待っててくださいねっ!」

「うんっ・・・

ヒデ君気をつけてねっ!」

陽子さんのバッグをひったくった

何者かは国道へ向かい走っているが

見た感じはそんなに進んでいないように

見える。

あいつがバテるまで追いかけたる。

俺は猛ダッシュでそのひったくり野郎を

めがけてダッシュする。

辞めてずいぶん経つが膝はもう大丈夫。

現役の頃のようなスピードは出ないであろうが

あんなひったくり野郎には負けんっ!

俺も元陸上部のはしくれ。

しかもま1ギリギリ10代、走って走れんことは無いと

思い今まででないくらい思いっ切り走った。

走りながら俺は

そういや~武市が今までで1番速かったときは

確か俺と仲代と一緒に3ケツしてバイク捨てて

警察から逃げた時あったな~

俺らプライベートでの方が速いやないかっ!

とそんな事を思い出しながらひったくり犯を追う。

「こら~待てっ!待たんかっ!

おのれっ!レディのバッグを

盗むのも許せんが突き倒して

陽子さんが怪我してたらこのカス

原型とどめておかんからな~!」

俺は見る見るうちに距離を詰め

おそらくは高校1年生の初めての

地区予選の最初の200メートルを

駆けた時以上のスピードが出ていたと

思う位身体が動きひったくり野郎の

背中が見えてくると俺は飛んだ。

そしてそのままひったくり野郎の背中

めがけて飛び蹴りを食らわせた。

「うら~!!

往生せいっ!このカスがっ!!」

ヒュンッ!!

ガスッ!!

「うぎぃぃぃっ!!」

ひったくり野郎は陽子さんの

バッグを手から離しその場に

前のめりで倒れた。

「オラッ!

おのれコラッ!

何さらしてくれてんねんっ”

このボケがっ!

壊れたプラモのように

バラいたるさかい覚悟せいよっ!」

倒れ込んだひったくり野郎に

ストンピングをかましながら

俺はみすぼらしカジュアル系の

服がボロボロで綻びもできている

ような服装の意外と若いひったくり

野郎が亀のようになり丸まって

「すんませんっ!すんませんっ!

ホンマすんませんっ!」

と謝りながら素直にストンピングを

受けているので無抵抗な輩をいたぶる

趣味も無い俺は怒りも冷めてくると

陽子さんもやっと俺においつき

この丸まっている痩せた亀が落とした

陽子さんのバッグを手に取り

「ヒデ君・・・

もうバッグ戻ったから・・・

良いよ・・・

許してあげたら・・・」

と俺の後ろで不安そうに呟く。

「あっ・・・

はい・・・

そうですね・・・・

おいっ!こらっ!

お前どこのどいつなっ!

警察に突き出したる!」

と痩せた丸まっている亀の

胸倉を掴み上げて

どんな面してんねんコイツと

思い見てみると・・・

そのひったくり亀は

「あっ・・・

あぁ・・・

キバ~?」

ひったくり亀は俺を見て

予想以上に高い声でそう言った。

俺をキバと呼ぶ奴は耳南の

同級生に他ならぬ・・・

まさか俺の青春のひと時を一緒に

刻んだあの耳南の同士に

こんなコソ泥みたいな真似する奴が

いるはずが・・・

俺は現実逃避したい気持ちを抑え

そいつの顔をよく見た・・・

髭が伸び元々痩せていたであろう

頬はさらにこけているが・・・

「おっ・・お前っ!!

毛じらみ!

ケジスケかっ!」

何とひったくり犯の正体は俺の

耳塚南高校の同級生。

石藤啓介(いしとうけいすけ)であった。

啓介は俺達、麻雀を始め様々な遊びを

よくしていた

【三出倶楽部】(サブカルチャーズマンション

耳塚シリーズ参照)

の隼メンバーでもあった男で麻雀の

牌の1策に似ていると言われてから

毛じらみと言うあだ名がつき啓介と

文字られケジスケと呼ばれていた。

元々は吹奏楽部の副キャプテンも

勤め確か吹奏楽の経験を活かし

自衛隊の吹奏楽団に入ったと聞いて

いたが・・・

何故いまこのような姿になっているか

俺にはさっぱり想像がつかなかった。

俺は啓介を起こし陽子さんに事情を

説明し民家の通りを過ぎた所の

公園で陽子さんと3人でベンチに座ると

缶ジュースを陽子さんと啓介にそれぞれ

手渡し啓介から事情徴収をすることにした。

⦅扉シリーズ 第2.8章 ロビンフッド6 終わり⦆
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俺は夜の公園のベンチで

座り話し始める同級生の

石藤啓介の話にベンチの前で

立ちながら缶コーヒーのブラックを

片手に耳を傾けていた。

陽子さんには不本意ではあるが

こんな所に付き合わせて立たせて

いるわけにも行かないので

一応啓介の横に腰を掛けて

もらっているが

そこは陽子さんも浮浪者同然の

恰好をしている啓介の不潔な

容姿に引き気味で隣に座るも

距離は取っていた。

「おい。

ケジスケよ~

お前は耳南卒業後

その吹奏楽の腕を

振るう為に自衛隊の楽団に

入ったんちゃうかったんか?」

陽子さんも距離を取り

啓介に視線を送る。

少しうつむきながら

神妙な面持ちの啓介が

少しづつ口を開きだす。

「ああ・・・

キバの言う通り・・・

俺は自衛隊の楽団に

入隊できたんやが・・・」

「そうやろ!?

仲代や武市もお前が

競馬のGⅠのファンファーレで

出てくるのん楽しみにしてたのに

何でそのお前がこんな所で

浮浪者まがいの格好でしかも

夜道を歩くレディのバッグを

かすめ取るようなセコイ行動に

出てんねんっ!」

俺は手に握るブラックコーヒーの

缶に力を込めながら19歳にして

落ちぶれた姿で俺の目の前に現れた

同級生に憤りを感じながらしかし

それでも怒気は必至で抑えながら

そう言った。

「ああ・・・

本当にキバとこな

姿で再会してしまうとは

面目ない・・・

俺は確かに自衛隊の

楽団には入隊できたのやが・・・

実は楽団も自衛隊は自衛隊で

ある事に変わりはなくな・・・

最初は基礎体力をつけるために

自衛隊の隊員と同じ

訓練を受けなあかんのや・・・

毎日毎日綱昇りや腕立て腹筋・・・

長距離走に武術の訓練・・・

柔道の練習は高校の体育の授業みたいに

あんな生ぬるいもんやなく

マジ落ちさせられるし・・・」

啓介が言うには意気揚々と得意の

楽器を振るう為に入団した自衛隊の

楽団には最初は自衛隊員並みの

訓練が待っていたとそういう事である。

しかし啓介の肉体は

グレードアップしたようには

とても見えない。

という事は啓介はおそらく

その自衛隊のしごきに耐えれず

逃げ出した挙句にここに居るという

推測が俺でなくとも隣で

ハンカチで口元を抑えながら

話を聞いている陽子さんでも

そう思ったと思う。

「お前・・・

気持ちはわかるがなぁ・・・

それで逃げて来たんか?」

高校時代は麻雀や花火の打ち合い

夕飯を賭けたTVゲームなどで

よく遊んだ友人にこんな風に

詰めるような聞き方はしたくは

無いがそこを聞かなければ話は

進まないと思い俺は言葉にして

発した。

陽子さんも啓介を見つめている。

「・・・・・・・・

・・・・・・・・・」

少しの沈黙の後啓介は無言で

首を縦に振りベンチでうなだれている。

「・・・・・

お前実家には帰れんのか?

・・・・

帰れたらあんな所におらんか・・・」

俺は見つけてしまったからには

このまま置いて帰るわけにも行かないし

しかしこの浮浪者まがいの啓介を

俺の家に連れて帰っても

親にドヤされることは目に見えて明らか

うちのオヤジが不審者と間違えて

啓介に突きでも食らわせてしまえば

啓介を助けるために連れて帰ったのに

啓介を再起不能にしてしまう可能性も

ある。

そんな事を考えながら俺は

啓介を眺めていた。

啓介は相変わらずうなだれたまま

で陽子さんはハンカチで口元を

抑えながら俺と啓介を交互に見ている。

そうだ・・・

何の関係もない陽子さんを付き合わせて

いるのでこんな殺風景な公園で

しかも浮浪者まがいの男の隣に

座らせ陽子さんを長居させるわけにも

行かないと思った俺は

もしかしたら・・・

いや・・・

これしかない・・・

後は俺の説得力とこのアホを

どう売り込むかやが・・・

「啓介・・・

お前今の暮らし抜け出せるんあったら

何でもするか?」

啓介は顔を上げきょとんと

している。

「金も入るし空き民家に

不法侵入してスリまがいな

事をせんでええんやから

頑張れっ!今よりましやっ!」

俺は強引にそういうと

「ちょっと待ってな

陽子さんもすんません。

もうちょっとだけ待って

下さい。」

そういうと俺は携帯を取り出し

携帯を鳴らした。

多分まだ店で片付けしてるか

起きている事には間違いないはず・・・

『はい。

もしもし

ヒデ君どうした?

陽子さんはキチンと

送り届けたかい?』

俺がかけた先は

俺のバイト先の

ロビンフッドの

マスターだった。

「あっすんません。

マスター。

まだお店ですか?

寝てはりはしません

でしたよね?

あっちょっと

事情ありまして

陽子さんはまだ

一緒なんですよ~」

そして俺は陽子さんと

徒歩で帰路についていた事

途中で浮浪者まがいの輩に

襲われ陽子さんのバッグを

摺られた事。

その浮浪者が俺の元

同級生であった事。

そしてそいつが

浮浪者になった経緯も話す。

マスターは一々大きく

相槌を入れてくれながら

真剣に聞いてくれている。

「そんな事があったんやね~

しかしヒデ君はキチンと

陽子さんのナイトできれるやない?

立派っ立派っ」

「あっいえ・・・

それはカバン一回摺られてますしねっ

ははっ・・・

あっそれでなんですが・・・

あの・・・

マスターにお願いがありまして・・・」

『うん。

かまわないよ。

その子迎えに行くから。

吹奏楽やってたのなら

音楽に長けてるから歌も

上手いだろうしね。

それに今はただの置物に

なっているピアノも

生き返るかもしれないし

どう?

その子ピアノはいけるかな?』

まだ何も言うてないのに

解ってくれはるとは・・・

実は半月ほど前に

マスターから俺は

店の人員不足で誰か大学生の

同級生でバイトしてくれる子が

居ないか相談されていた。

その時俺の頭には武市と北尾しか

思い浮かばずに2秒で自主的に却下して

マスターには良い奴おれば声かけて

みますとだけ言っておいた。

そしてその言葉を思い出し

啓介なら風呂に入れ散髪に行かせて

髭もそれば見栄えはそれなりに映える。

当分は俺やマスターの服ならサイズは

合うだろうからそれを着て店に出れば良い。

そう思いダメもとでマスターに一度

連絡を取ってみたのだ。

しかし本題を言う前に察してくれた

マスターは既に啓介の経歴・・・

経歴と言っても吹奏楽をやっていて

自衛隊の楽団に入り逃げ出しただけなのだが

その経歴を聞き店でのポジションまで

考慮してくれたうえで軽くOKの

返事を頂いた。

「マスター・・・

僕まだ何にも言ってませんのに・・・」

俺は感動で震えながら声まで震えていた。

『えっ?

その子うちで雇うんじゃないの?

良いよ丁度僕のマンション

空き部屋2つほどあるし

そこに住んでもらえば。

あっ女性が来る時はその子には

何処かホテルに泊まってもらうけどね

ははははっ』

「あっマスターちょっと

待って下さいね。」

俺は一旦電話を受話器から離し

「おいっケジスケ?

お前楽器でピアノは弾ける?」

啓介は電話で話して居る俺を

ずっと見ていたようで

「ああ。

ピアノなら子供の頃から

ずっと習ってたからなぁ・・・」

その返答を聞き俺は

「あっマスターすみません。

僕の友人、ピアノもいけるみたいなので

是非お願いしますっ!」

本人の意思は関係なく俺は

マスターにお願いしたが啓介も

ここで野垂れ死にするよりは

良いだろうと思い両方に多少

強引に話をこぎつけたが

啓介的にも好きな楽器ができるのだし

マスターも人員不足解消になるし

我ながらこれで良かったと思い

納得していた。

電話を切った俺はマスターが迎えに来て

くれるというのでマスターが車で

来てくれて啓介を紹介するまでもう少し

ここで陽子さんに付き合って待ってもらうよう

頭を下げ陽子さんも良かったねと笑顔で了承

してくれた。

当の啓介も最初はレディースバーの仕事って

俺できるかな?

と不安がっていたが

マスターはええ人やし先輩方もお客様も

ええ人ばかりやから大丈夫と啓介を励まし

ているとマスターの国産の高級セダンが

到着し啓介を紹介しマスターに引き渡し

何度も啓介と2人でお礼を言いながら

小汚い啓介をマスターの高級車に乗せるのは

気が引けたがマスターは気にもしていなかった

ようであっさり啓介を乗せ走り去って行った。

俺はマスターの消えて行く車を見ながら

男の器というものを感じていた。

そしてやっと本来の任務の陽子さんを無事に

送り届ける事を再開できるのであった。

《扉シリーズ 第2.8章 ロビンフッド7 終わり》



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ケジスケ襲来と言う霊障を

見事ウルトラC並みの対応で

切りぬけた俺はそのまま

麗しきレディの陽子さんを

無事に自宅まで送り届けるという

任務を遂行しつつ暗すぎるために

i依然不気味な夜道を歩いていた。

ケジスケをロビンフッドの

マスターに引き渡した公園から

陽子さんのマンションまでは

何事もなくたどり着いた。

サンハイツ鶴澤。

陽子さんが1人暮らししている

マンションである。

北尾やヒカルさんが住む

スカイハイツ鶴澤のような

高層でオートロックでは無いが

陽子さんも体育大学の学生時代の

ワンルームではなく社会人となり

引っ越して住み始めたマンションである

のでそれなりの家賃なのだろうな?

と俺は6階建てのサンハイツ鶴澤を

見上げていた。

確か陽子さんの部屋は403・・・

何か今陽子さんの部屋の中に

不気味な影が見えた?

いや厳密に言えば見えるはずは

無いので感じたのだろう。

俺は陽子さんの部屋を見上げて

何やらついこの間北尾の部屋に

乗り込んだ時のような嫌な

違和感を感じた。

「あっ陽子さん。

お疲れ様でしたっ

車は俺

明日大学昼からなので

朝取りに行きここに停めて

おきますから」

陽子さんがマンションの玄関口で

集合ポストに入れられている

いかがわしいチラシをまとめて

ゴミ箱に捨て必要なものを

一時はケジスケこと石藤に

摺られたバッグに入れた。

「うん・・・

それでも嬉しいんだけど・・・

ヒデ君。

私今日何か怖いというか

不安で・・・

結局あの子はヒデ君の

お友達でヒデ君のお蔭で

私も無事だったけど・・・

だから・・・

もう少し一緒に居てっ

お願いっ

コーヒーでも飲んで行ってよ」

と陽子さんが俺のスーツの袖を

引っ張りながら不安そうな

表情でそう言う。

6歳も年上でヒールを履けば

俺よりも背が高い陽子さんが

やけに可愛く見える。

確かにそうだと思う。

暗闇でいきなり浮浪者まがいの

ケジスケに体当たりをされ尻もち

まで付きそのうえバッグまで

ひったくられた後なのだ。

不安な気持ちは収まらないであろう。

普段なら俺の倫理観と燃える下心を

戦わせるところではあるが今日は

陽子さんの部屋に見える

【何か】

も気になるしこの不安そうな

表情の陽子さんをこのまま

1人で部屋に帰らせる事など

俺の武士道に背く行為であるので

出来るはずも無く燃える下心の

大圧勝にて俺は2つ返事で

陽子さんの部屋でコーヒーを頂く事に決めた。

「そうですね・・・

そりゃあんな目にあった

後じゃ不安だと思いますし

ほな陽子さんの部屋で

コーヒーでも頂いて

帰ろうかな?

ハハッ

陽子さんが安心して眠るまで

傍で居ますよ俺」

右腕の袖を陽子さんに

摑まれていたので

左手を後頭部に当て頭を抑えながら

年上のレディの部屋に初入室となれば

さすがに緊張もするし興奮もするので

動揺をばれないようにしながら冷静を装った。

「ホントッありがとうっ!

ヒデ君!本当に頼りになるわっ

嬉しいっ!」

そう言って陽子さんはまた

再びこのマンションの前まで

の間そうしていたように俺の

右腕にしがみつくように腕を組んできた。

はうっ!にゅ・・

乳圧復活よ~!

しかも今から陽子さんの

スィーティールーム

に侵入しようとしてる

道中でこの乳圧は

ジーマーでバーヤーやないか!

(木林&武市語で

マジでヤバイの意)

俺は右腕に再び乳の圧・・・

つまり陽子さんの胸の圧力を

感じながらエレベーターに乗る。

そらこんなバイヤー(やばいの意)

なシュチュエーション

心の中での気持ちも北尾口調になるわっ!

俺は動揺していてもアホである事には

変わりなくそんな事を思いながら

エレベーターの陽子さんが4階を押した

はずなのに付かないという意味不明な

エレベーターに不信感を感じさらに

俺が4階のボタンを連射するもランプが

付かない。

仕方ないのでいったん降りてみるか

と思いエレベーターを降りる

事にする俺と陽子さん。

「あれ?

なんでや?

陽子さん

一旦降りましょか?」

「うん・・・・

故障かな?」

そう言って俺は陽子さんと

一旦エレベーターを降りると

エレベーターは独りでに上へと

動いて行った。

なんやねん!いったい・・・

俺は何か嫌な予感がしていたが

俺が何か言うたり不安そうな

表情を見せたりすると陽子さんに

余計不安な気持ちを与えてしまうので

ふふふ~んという表情で口笛を

吹きながらエレベーター早く来いよ~

お前何でいっつも四角い図体してんねんっ!

とエレベーターに理不尽極まりない

念を送っているとやっとエレベータが

来たが何やら人が乗っているが1階で停り

エレベーターのドアが開く。

うん?

俺は何かエレベータの中が暗く感じたが

人は乗っているしかも4人。

こんな時間に?

とも思ったがこの人たち

どうやら家族のように見える。

1人は40代くらいのおっさん。

おっさんは俯いている。

もう1人はおっさんの奥さんか?

30代半ばくらいのレディ。

レディも俯いている?

なんでやねんっ!

そして10歳くらいの少女と

5歳くらいの男の子。

共に俯いている。

どんだけ根暗な家族やねんっ!

と思いながら4人組を眺めていると

おっさんが俯いたまま手を出し

人差し指で俺を差した。

なんやこのおっさん・・・

俺は不気味に思い背中にじんわりと

冷たい汗を感じるが

こいつ喧嘩売ってんか?

とも思うがこんな家族連れのおっさんが

そんな事はせんやろと思っていると

おっさんは俺を差した指を下に向けた。

ああ・・・

エレベーター下に行くという意味ね。

そう思い俺はホッとするが

右手に感じていた陽子さんの乳圧が

さらに強くなっている。

何か陽子さんもこの家族を不気味に

感じているのだろう。

夜逃げかこいつら?

そう思っていると

奥さんらしきレディも

俺を指さし

その指を下に向けた。

子供たちも同じようにする。

あ~だから解ってるって!

下に行くんやろ!

陽子さんのとてつもない

乳圧に震えを感じる。

仕方ないので俺が口を開く

「あっすんません。

僕ら4階なので・・・」

そう言うとエレベーターは閉まり

エレベーターは下に動いて行った。

「なんなんすかね~?

あの人ら・・・

まさかこんな時間やし

夜逃げとか・・・?

ははっ」

俺が陽子さんの強くなり続ける

乳圧から陽子さん怯えてるんかな

と思い少し笑かそうと思いそういうと

「うそ~!!!!!」

陽子さんが急に悲鳴を上げる。

「えっ?えっ?

マジで夜逃げ!?」

陽子さんが尋常じゃない声を

上げるので俺もドキッとなり

何かまずい事言ったか俺?

と思いながら陽子さんを見る。

「ヒデ・・・く・・・ん

ここ・・・」

ゴクリと唾を飲み

とっくに酔いが覚めやや

青白い陽子さんの顔色に

何があったんだと思い

陽子さんの言葉に耳を傾ける俺。

「地下なんてないのに・・・

いや~!!!」

えっ?

今陽子さんは地下が無いと言った。

そうか?

陽子さんのマンションは1階から6階で

駐車場は屋外。

地下に駐車場があるようなマンションではない。

というとあの家族は・・・

マジかよっ!

見てんよ~俺思いっ切り見てしもてんよ~!

すぐさまこの笑気を武市に分けてやりたいが

普通の人が見てしまえば陽子さんのようになるのが

当たり前。

俺は陽子さんの地下が無いという言葉から

全て察して

「陽子さん。

しゃ~ない。

階段で上がりましょ。

今日のエレベーターは

ご機嫌ななめっぽいっすわ。」

と俺は何故か地下が無いはずの

マンションのエレベーターが

俯く4人連れ家族が降って行った

先からさらに俺らを迎えるように

下から1階へ停まったむかつく

エレベーターを尻目に陽子さんを

階段へ誘導し陽子さんの部屋に向かった。

《扉シリーズ 第2.8章 ロビンフッド8 終わり》



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ケジスケの来襲に訳のわからん

家族連れの夜逃げまがいの

エレベータでの怪と今日に

限り何故に陽子さんを自宅へ

送り届けるだけなのにこんなに

困難なのかと少々腹も立っていたが

階段を使いやっと陽子さんの部屋が

ある4階へ辿りつくと年上のレディの

部屋への初入室に俺は少し

緊張していたがさっきのエレベーターでの

出来事によりアドレナリンが大量分泌され

緊張も忘れていた。

それは別の理由で別の緊張感があった

事も関係していたが・・・

「はぁ~疲れた~

さあヒデ君入って~」

陽子さんが玄関先でヒールを脱ぎ

しゃがみながらヒールをキチンと揃えると

玄関から見えるリビングへ

入って行きながら俺に

部屋に入るよう促す。

「あっはい・・・

ほなお邪魔します・・・」

俺の今日のスーツ仕様では

あるが万が一の為に靴先に

鉛が入っている見た目革靴

性能は安全靴である靴を脱ぎ

靴先を玄関へ向け揃えると

陽子さんに続きリビングへ

上がらせて貰う。

陽子さんの部屋は意外にも

パステルカラーのテーブルに

家具で揃えられていてカーテンも

パステル模様で見た目の色気とは

反して部屋は乙女チックな感じがする。

やる気の無さそうなパンダの

クッションがあったので俺はそこに

どっかりと腰を降ろした。

「ヒデ君

少し待ってね~

今コーヒー入れるから

適当にくつろいでいて~」

先程までエレベーターの中に

生きてはいないであろう

4人連れの家族を見て

あるはずの無い地下にエレベーターで

降りていくという怪奇現象を

目の当たりにした陽子さんは

怯えていたが部屋に入り俺と

一緒で1人では無いという安心感からか

少し落ち着いてきたような気がする。

しかし何故か俺は陽子さんの部屋に

入った後も若干部屋が黒ずんで見え

パステルカラーのメルヘンチックな

部屋にも靄がかかったているような

感じに映っていて緊張感は解けては

いなかった。

こんな時に武市居たらな~

俺には何となくヤバイというのは

解るのであるがそれ以上の専門的な

事までは解らない。

しかし今俺はロビンフッドのバイト

帰りであるので愛用のグラサンは

着用していない。

それでいてこの暗さか・・・

何かこの部屋を外から見た時に

感じたのは気のせいか?

さっきの家族連れの影響か・・・・?

それともそもそもこのマンション

自体がヤババイマンションで

陽子さんの部屋に限った事では

無いのか?

俺にはヤバイのかヤババイのかの

区別もつかんし場所も特定できない。

しかし今のところこの部屋には何も居ない

ような気がするのでとりあえずマンション

全体がヤバいのか?

と思い陽子さんが出してくれた

コーヒーに少し口をつけた。

「あっ頂きます~」

「あれ?ヒデ君

砂糖とミルクは?」

陽子さんが手に持っている

スティックの砂糖と

一口サイズのミルクを俺に見せながら

「あっ俺コーヒーは

黒専門なんでっ」

「はははっ

服と同じだねっ」

やっと陽子さん笑ってくれたので

背中に嫌な物を感じ緊張気味であった

俺もやっと同じように笑えた。

「ははははっ

男は何でも黒ですよっ!」

「え~そうなの~!?

ははっもうっ

ヒデ君意味わからんよ~

あっ私お風呂入って

来るから適当にくつろい

でてね。

それともヒデ君も

一緒に入る?」

「ぷぷ~!!!!

えっ?えっ?」

俺は飲みかけていたコーヒーを

噴き出してしまい霊障の時以上の

動揺を見せてしまう。

「もう~そんなに嫌なの~?

うそうそっ冗談よ~

じゃあ待っててねっ」

「はっ・・

ははっ・・・

そりゃそうですよねっ・・・

ははっ・・・」

俺は噴き出してしまった

コーヒーをティッシュで拭きながら

忙しかった1日でやっと1人

落ち着ける時間を持てていた。

はぁ・・・・

今日は店も忙しかったし

ケジスケには会うし

ケジスケは浮浪者になってるし・・・

おまけに変な家族には・・・

しかしあの家族は一体なんあったんやろ?

このマンションで死んだ人とか?

一家4人同時にか?

でもそんな事件じみたことが

あったらニュースにでもなるやろ?

しかもまともに地元やし

それなら俺も聞いたことくらいは

あるはずなんやけどここでそんな

事件あったなんて知らんけどな~

うん!?

俺は陽子さんのベッドの向こう側の

奥辺りから何やら視線を感じ

思いっ切り睨み付けたが誰も居なかった。

ふぅ~気のせいかぁ・・・

あかんな~何か神経過敏

になってるわ~

陽子さんが出て来たら俺も風呂借りようかな?

しかしさっきの陽子さんの

一緒に入る発言は驚いたな~

そんなん陽子さんとの混浴なんて

大歓迎やっちゅ~の!

あれくらいで動揺してしまうのが

まだまだ俺の甘い所やろな~

男はあれくらい受け止めて逆に

面白い返しの1つでも出来んとな~

まあ同じシュチュエーションに武市が

なったらあいつならコーヒーも吹きだせずに

石化してたやろうな~

ぷぷぷっ!

ゴリラの石像になってんよ~

石になったゴリラが部屋にある

気持ちよ~

そりゃ陽子さん気の毒やわっ

霊障よりある意味怖いしなっ

ぷぷぷぷっ・・・

俺がアホな妄想に浸り1人で笑っていると

ガチャッツと音がして入浴を済ませた

陽子さんが出て来た。

うおっ・・・・!!

陽子さんはさっきまでの短めの丈の

スーツ姿とはまた違い寝巻用なのか

デニムのホットパンツに黒のノースリーブの

シャツかタンクトップか解らないような感じの

とにかく露出MAXの姿で現れ髪は下ろさずに

後ろで1つに束ねたものを前に戻しヘアピンで

止めていてさっきまでとは全く感じが変わっていて

今度は俺が本気で石化しそうになっていた。

湯上りの陽子さんの全開に露出された脚は

ほんのりと桜色に染まり動くだけでその

豊潤な肉が揺れ俺の一物を大いに刺激する。

「ヒデ君お待たせ~

え~!?何で1人で今笑ってたの~?」

ゴリラの石像を妄想しそれが部屋にある

陽子さんの悲惨な感じをさらに妄想してしまい

完全な自爆での笑気にやられていた俺を

見て陽子さんは変に思ったのか1人で笑って

いたことを突っ込まれた俺は

「あっいや・・・

ちょっと色々考え事を

していたらですね・・・

友達のゴリラが石化した

事を想像してしまいまして・・・

ははっ・・・

それで何か笑けてしまいまして・・・」

今すでに俺の頭の中からは武市の石像は完全に

消え去り目の前にある陽子さんの艶めかしい

美脚しかなかった。

「もう~何よそれ~?

意味解らんし~

ははははっ

あっヒデ君もお風呂入る?

今日は私もいっぱい世話

かけてしまったし・・・

疲れたでしょ?」

陽子さんがリビングの隣の

キッチンの冷蔵庫から何かを

取り出しながら話している。

「あっいや・・・

そんな世話何て事はないですよ・・・・

あっほな僕もお風呂お借り

して良いですか?

ちょっと酒も抜きたいし・・・」

「うん良いよ~

ゆっくり入って来てね~」

俺は陽子さんのお言葉に甘えて

バスルームの前の脱衣場に向かいながら

「すんません。

ほなお風呂借りますね~」

と言いながら脱衣場に入って行った。

⦅扉シリーズ 第2.8章 ロビンフッド9 終わり⦆



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陽子さんの部屋のバスルームを

借りとりあえず汗を流し着替えの

持ち合わせなどは勿論無かったので

着て来たままのスーツの中に着ていた

カッターとスーツの下を履き靴下は

面倒くさいのでスーツの上着のポケットに

しまいそのまま脇に抱えてリビングに

戻った。

「あっ陽子さん

お風呂まで借りてありがとうございました。

めっちゃスッキリしましたよ~」

「良かったぁ

ヒデ君何か冷たい物でも

飲む?」

陽子さんがリビングのテーブルの

前の俺がさっきまで座っていた

やる気の無さそうなパンダの

クッションの上から立ち上がると

冷蔵庫の前に行き冷蔵庫を開ける。

中を覗くが冷たい物はチューハイやら

ビールばかりであった。

「そうですね~・・・

あぁ・・・

さすがにもう酒は良い

から下で自販あったみたいなので

俺何か買ってきますわ~」

陽子さんが冷蔵庫を閉めると

苦笑いで

「あはっ

ごめんね~お酒類しか

置いていなくて~」

「いえいえ。

陽子さん何が良いですか?」

俺は脇に抱えていた

靴下がポケットに入った

スーツの上着をソファに

置くとスーツの下のズボンの

後ろのポケットに財布が入って

いる事を確認し玄関先に向かい

歩を進めた。

「う~ん・・・

下の自販だよね~

じゃぁ・・・

ウーロン茶お願いして良い?」

「ウーロン茶ですねっ

承知。

では行ってきますね~」

少し不安そうな表情で

こちらを見ながら陽子さんが

「・・・

ヒデ君・・・

早く帰ってきてね・・・」

と言っている。

ケジスケの件から

エレベータの家族連れの

この世の者ではないであろう

者達との遭遇とロビンフッドや

陽子さんがバイトする楓のある

テナントからここに来るまで

今日は本当に色々な事があった

ので不安になるのも解るが

俺がマンションの下に行き

マンションの向かいにあるタバコの

自販と並んであるジュースの自販で

ジュースを買い戻ってくるのに

ものの数分。

その間位1人にしても大丈夫だろうと思い

「ははっ

少しの間ですよっ

そんな不安そうな顔

せんどいて下さいよ~

では行って来ますねっ」

と俺は裸足のまま靴を

履き陽子さんの部屋である

403号室を出た。

さっきの今なのでさすがに

エレベーターを使う気が起きず

俺は階段で1階まで降りることにした。

うん?なんやこれ・・・

さっき陽子さんと4階まで

昇って来るときにはそんな

事は無かったのに4階から3階に

降りる階段の踊り場が靄がかかって

見える。

愛用のグラサンは着けていない。

夜だから暗いというわけでも無く

廊下から踊り場にかけては

マンションの設備の明かりがついて

いるのにもかかわらず黒ずんで見える。

やっぱり・・・

このマンションはおかしいぞ・・・

前に武市と高校から大学に上がる

春休みに何件か心霊スポットに

乗り込んだ時に

有象無象のショボイ霊たちが

たまり場を作るみたいなことを

国内屈指の霊能者である

武市の叔母さんの甲田福子先生が

巣と言うと武市から聞いていて

その春休みの心霊スポット巡りで

武市が

「ここは巣やなぁ」

と言うていた所が

俺には全て今見えているような

靄がかかり暗く見えていた。

その時の体験になぞらえると

この陽子さんの住むサンハイツ鶴澤も

巣という事か・・・

さっきのエレベータの在る筈の無い

地下に降って行った夜逃げ家族も

ここが巣やから当たり前のように

居てたんか?

俺は靄のかかった階段をジュースを

買うために3階、そして2階と降って

行く。

勿論さっきは無かった靄が3階から

2階に降りる階段の踊り場にもあり

2階の踊り場を通過しようとした時

俺は一瞬歩を止めてしまった。

その理由は踊り場には明らかに

生きているとは思えない銀色のような

グレーのような肌をした5歳か6歳くらいの

男の子が全裸で三角座りをしながら俺を

見上げていたのだ。

見てんよ~

また俺見てんよ~

何や今日は・・・

しかしこの子・・・

害は無さそうやがこの年で・・・

可哀想に・・・

俺を見上げている子を

避けるように俺は階段を降り

1階まで降りるとマンションの

玄関口を出て向かいにある

ジュースの自動販売機の前に

辿りつく。

そしてジュースを買う前に丁度切らして

いたタバコを先に購入する。

「よっしゃっ!

ヤニ補給完了っと・・・」

俺が外にジュースを買いに来たもう1つの

大きな理由はヤニ切れを起こしていた

事に他ならない。

ヤニ切れを起こしていた俺は

購入した俺が愛煙してやまない

銘柄コールドの箱のセロハンを

外すと箱から1本タバコを取り出し

勇んで火を点ける。

「ふぅぅぅ~

このヤニを我慢しまくって

いた後にヤニる気持ちよ~

めっちゃ小便を我慢した後に

一気に放出する小便の

気持ち良さに匹敵するやろ~」

もう1人仲良くしてもらっている

ヒカルさんのマンションには既に

俺専用の灰皿が設置されていて

ヤニるという蛮行のお許しも

出ている仲になっていたが

陽子さんの部屋は今日が初訪問。

さすがに初訪問のレディの部屋で

ヤニるという行為は俺の武士道に

反する為、俺はこの自販機前で

ひとヤニ入れていく事にした。

コールドを立て続けに2本吸い終わると

俺は愛用の携帯灰皿に吸殻を詰め込み

ジュースの自動販売機でコーラと

陽子さんリクエストのウーロン茶の

ペットボトルを買い陽子さんの

部屋に戻る為に再度マンションの

玄関口の前まで歩いた。

何気なく陽子さんの部屋を見上げたのは

俺の意識的な行動ではなく

何かもっと俺の奥底にある潜在意識が

そうさせたような無意識とはまた

違う内面からの俺から俺への命令を

受けたような感じがしたが深くは気にせずに

陽子さんの部屋を見上げる。

403号室。

隣の部屋は両方ともすでに消灯して

いるが明かりの点いているのが外から

でも解るのが陽子さんの部屋。

なっ!?

そう見えたのかそう感じたのかは

今の俺には判断できないがあの部屋に

陽子さん以外の者が1人確実にいるのが

外から見ればよく解った。

いやそう感じた。

それは今陽子さんのすぐ後ろに居る!

俺は飲むときに炭酸が暴発する事も

構わないと思いコーラーとウーロン茶の

ペットボトルを両手にバトンのように

持ちながら猛ダッシュでサンハイツ鶴澤の

玄関口を潜り抜けた。

1階から2階へ階段を駆け上がる。

「はぁはぁっ・・・」

時間は既に深夜3:00を過ぎており

この時間まで起きている事

ここまで酒を飲んだ後に

歩いた事。

ケジスケを捕獲するのに

久々に全力疾走をしたことから

俺もさすがにバテていて息も

上がる。

そして息の上がる中

2階から3階へ駆けあがった時

俺は目の前にさっきの

銀色の全裸の子供とはまた

別の物を見る。

あのな~・・・

1日に3回は見過ぎやろ・・・

階段を全力疾走で

駆けあがっていた俺が急ストップ

をかけたのは止まらざるをえなかった

からである。

「おっさん・・・



急いでんねん。

ちょっと通してくれへんか?

言葉わかるんあったら

頼むわ~」

俺が急ストップをかけたのは

さっきここで三角座りをしていた

子供が居た位置に踊り場の

天井に届くのではないかと思うほど

デカイ

いやデカすぎる

ゆうに2メートル50センチくらいは

あるのでは無いかと思うほどの巨大な

全裸のおっさんが俺の道を塞いでいたからだ。

『お前が行くのは7階か?

お前が行くのは7階か?

お前が行くのは7階か?』

耳に聞こえるというよりは

直接脳に届くような声が

確かに俺に聞こえる。

はぁ?

何言うてんねん

このおっさん・・・

てかここ6階までしか

無いやろ・・・

そう思いながら4階と答える

べきかどうすれば良いのか

考えながら俺はさっき外から

見えた陽子さんの部屋の影の

事を気にしながら考えていた。

⦅扉シリーズ 第2.8章 ロビンフッド10 終わり⦆



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プロフィール

千景

Author:千景
私は他の一夜限りの思い出話という官能小説を今も書き続けております。今回はホラー小説扉筆者の冨田さんより扉の官能部分に当てはまるシーンの描写のご依頼があり引き受けた次第でございます。本編のイメージを壊さないよう精一杯書かせて頂きます。

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